077003 ランダム
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Lee-Byung-hun addicted

Lee-Byung-hun addicted

第2話

「あなたたち、どこまで行ってきたの?もうお昼じゃない!」

家に帰るとあきれ返ったようにオモニが笑いながら言った。

二人はキッチンのテーブルに並んで座ると

呼吸を合わせるかのようにテーブルに突っ伏した。

「お腹がすいて・・・・・死にそう。」

匂いにつられて顔を上げた二人。

「うわぁ~。ビビンパだぁ~美味しそう。」

突っ伏した二人の頭の前に

オモニは用意してあったビビンパとたくさんのおかずを並べた。

「いただきま~す。」

揺が食べようとしたとたん、

ビョンホンが揺のビビンパとスプーンを取り上げた。

ビックリして憤慨する揺に彼はにっこり笑いかけると

手早くビビンパをよく混ぜた。そして揺にスプーンを手渡した。

「ありがとう」揺はとても幸せだった。

彼が混ぜてくれたビビンパはより一層美味しかった。

「しかしお母様のビビンパは美味しいですよねぇ~。何でかしら・・」

揺はスプーンを忙しく動かしながら嬉しそうにそう言った。

「それは・・・ふたりで食べてるからじゃない?

さて。私は夕方までお買い物に行ってきますね。お片づけよろしくね。」

オモニは笑いながらそういうとウインクしてキッチンを後にした。

口にビビンパをいっぱいほおばったまま微笑み合う二人。

そしてお互いの口のまわりについたご飯粒を取り合った。

そしてそれぞれ口に運ぶ。

二人きりのしばらくぶりの休暇だった。

ユン教授ももう彼の身体の中にいない。

次の別の人の人生を生きるまでの自分の人生を彼は思う存分謳歌していた。

揺のいない人生なんてやっぱり考えられない・・・。

彼女の口の脇についたご飯粒を自分の口に運びながら彼はそう思っていた。

「ねぇ、ビョンホンssi。ご飯食べ終わったらお皿洗おうね。

それから一緒にDVDを観て音楽を聴いて・・・ワインを飲んで。

キスして・・愛し合って・・抱き合って眠って・・一緒に起きて・・

海でボードをして・・・ご飯一緒に食べて・・・またお皿洗って

・・それから・・・・」

喋り続ける揺の口をビョンホンは優しくキスで塞いだ。

「よくばりだな。僕だって揺としたいこといっぱいあるんだから。

勝手にひとりで決めるなよ。

え~とまずだなぁ~。お皿を洗う。

それから・・・ゴルフもしたいな。

カラオケもしたいし、お風呂にも一緒に入りたい。それから・・・」

ふたりは食べ終わりお皿を洗いながらもずっとずっと話し続けた。

「じゃあ、まず手始めにお風呂に入ろうか」

ビョンホンは嬉しそうにそういった。

「何で手始めにお風呂なのよ・・変なの」

動揺を隠すかのように揺は笑い飛ばしながら言った。

するとタイミングよくピンポーンというインターホンの音。

「誰だよ。いいところなのに」

ビョンホンが渋々出ると

「お~い。揺ちゃん帰って来てるんだって。

今日はお帰りなさい会やろうぜ。皆あとで来るって」

「監督~。え~~っ。もう。しようがないなぁ~」

困ったようだが嬉しそうなビョンホンの笑顔を見て

揺はとても幸せな気分だった。

「揺・・・いいかい?」

「もちろん!大歓迎。楽しくなりそうね。」

揺はにっこり笑った。



その日は大勢のビョンホンの友人が揺をダシにして遊びに来た。

彼らは仕事も皆様々。

みんな思い思いの話をし楽しんでいる。

その中でビョンホンが楽しそうに笑っているのを揺は満足げに見つめていた。


「おっ、今日の主役がひとりでどうした、揺ちゃん」

「ジウン監督、お久しぶりです。・・・お元気でしたか?」

「まあ、ぼちぼちね。どうだった?アフリカは。」

「ええ。いろいろあって・・すっごく楽しかったけど・・大変でした。」

「結婚したって聞いたよ。」

「えっ・・・」

「あいつ相当しょげてたから・・。一応励ましておいたけど」

「お世話おかけしました。でもあれは成り行きって言おうかもののはずみって言おうか・・。」

「意外に本当の結婚ももののはずみとか

成り行きでしちゃったりするんじゃん。」

ジウン監督はそういうとニタッと笑った。

「監督がおっしゃると妙に説得力ありますね。」

「コムヌンモリガパップリトゥルテカジ」

「?」

「ビョンホンにそう言われたことある?」

「えっ、たぶんないと思いますけど・・・」

「へ~っ。これ韓国の一般的なプロポーズの言葉なんだけど。

揺ちゃんまだプロポーズされてないの?」

「いや。どうなのかな。

結婚しよう・・とはだいぶ前に言われた気がしますけど。」

「ねえねえ。アイツなんて言ってプロポーズしたの?

まさか結婚しようだけじゃないよね。・・」

「えっ、そっそれは・・ですね・・・」


「何話してるの~。」

ビョンホンが笑いながらやってきて揺の肩を抱いた。

「えっ・・・ジウン監督に結婚について教えてもらってたの。」

「おまえさ~。教わる人くらい選べよ。

監督に聞いたってそれは・・・無理だろ。」

ビョンホンはそういうとゲラゲラと笑った。

「意外に外から見たほうが核心が見えること・・・・あるんじゃない。

監督は見えすぎてるから結婚しないんですよね。」

「やっぱ、揺ちゃん誰かと違って賢いわ。

そう。俺は出来ないんじゃなくってしないの。

わかった?俺、揺ちゃんとだったら結婚してもいいよ。

今ちょうどプロポーズしてたとこだ。」

「いやぁ~。何だか最近異常なまでにモテるんですよね。

「コムヌンモリガパップリトゥルテカジ」

もいい言葉だし。どうしようかしら。バツイチですけど気にしません?」

「それぐらいのほうが女として魅力的だろ・・」

「いやん。そうですか。・・・ちょっと考えてみようかな・・」

全くビョンホンを無視して会話する二人の間に挟まれた彼はむっとしていた。

「お前、今俺に嫉妬してるだろ。」とジウン監督。

「まさか~。何で俺が監督に嫉妬するんですか」

ビョンホンは揺の肩を自分の方に引き寄せながらむっとしてそういった。

「ほら、その右腕が嫉妬してるんだよ。」

笑いながらジウン監督は冷たく冷えたゆず茶をストローで飲んだ。

「人の心ってひょっとしたところから覗けるもんなんだよね。・・

じゃ、揺ちゃんプロポーズの返事考えといてね。」

「はい。監督」

ジウン監督はそういい残すと左手を振りながら席を立って

人の輪の中に消えた。

「全くもう。・・・・揺。楽しい?」

「楽しくなさそうに見える?」

「全然。とっても楽しそうに見える。」

「すっごく楽しいわ。あなたの友達は刺激的な人が多くて。

みんな親切だし。お話してると時間があっという間だわ。」

「そう。そう言ってくれると僕も嬉しいよ。・・・・ねえ、揺」

「ん?」

「やっぱり・・・結婚しようよ。」

「クックック・・・」

「何で笑うんだよ。」

「さっきのジウン監督の話・・気にしてるの?

それとも・・・バツイチの件?」

「両方・・・・かな。皆に揺を取られそうな気がする」

「・・・・・・」

揺は彼の隣で大笑いしていた。

「何で笑うんだよ。」

むっとするビョンホン。

「そんなわけないじゃない。

イ・ビョンホンともあろう人が何言ってるのよ。

結婚しようがしまいが気持ちが離れる時は離れるわけでしょ。

それとも結婚していないと繋ぎとめられないものがあなたは欲しいわけ?」

「そうじゃないけど」

「そうじゃないけど?」

「・・・揺はそれでいいの?」

「私はあなたに愛されてるという事実があるからそれで充分。」

「結婚って・・・得るものもいっぱいあるけど

諦めないといけないものもお互いいっぱいありそうだから・・・

ゆっくり考えればいいんじゃないかな。

私のことを心配して急ぐ必要は全然ないから。

まさか結婚っていう手錠かけておかないと

自分が浮気しそうで怖かったりするんじゃないでしょうね。」

「まさか・・」

「わからないわよ・・・犬小屋の前のあなたは連れ去られる寸前だった・・

タリに感謝しないと。やっぱ手錠かけとかないと危ないかな。」

揺はそういうと手に持ったグラスの氷をカランと鳴らした。

「僕が信用できない?」

「信用してなかったらすぐにでも結婚してずっとそばに張り付いてるわよ。」

揺はそういうとクスクスと笑った。

「・・・・」

ビョンホンは揺の答えを聞いてただ微笑んだ。

そして彼女の肩を抱いた手にぎゅっと力をこめた。

「じゃ、君が結婚したくなったらいつでも言って。」

「・・・ビョンホンssi。私ね。時々想像するの。

あなたが夫になってパパになって家族や家のことを心配しているところ。

そんなあなたも見てみたいし、

きっとそんな生活もあなたの俳優としての感性にいい影響を与えてくれる気もするの。

でも、今のままの自由で何にでも挑戦できるあなたも見ていたい。

きっと結婚して家庭を持つとどうしても守りに入るんじゃないかな・・・。

何だかそんなことを考えると結婚するのがもったいなく感じるのよ。

私って欲張りかしら。

今のままの関係を続けたら両方が手に入るかもしれない・・・」

「揺・・・」

「まあ、焦らなくてもね。

ジウン監督の話だと結婚の秘訣は物のはずみとか成り行きらしいから。

いつかそんな時も来るわよ。」

揺はそういうと彼女の肩に置かれた彼の手をトントンと二回叩いた。



「揺ちゃーん、映画観ない?」

遠くでスタッフの一人が呼んでいる。

「観る観る・・・・なんの映画?」

揺はそう答えながらビョンホンの隣を離れた。

楽しそうに笑う彼女の笑顔を見ながらビョンホンは思った。

(物分りが良すぎる女ももしかしたら考え物かもしれない・・

俺、一生結婚できなかったらどうしよう・・・・)

「ヒョン!映画はじめますよ~」

「お~。今行くよ。」

ビョンホンはワイングラスを手に取って立ち上がった。




ビョンホン自慢のAVルームでは

遊びに来たスタッフが持ってきた日本映画の上映会が開かれるところだった。

「誰の映画?」

部屋に入ってきて訊ねるビョンホンにジウン監督が答えた。

「西川美和監督。7月に公開したやつ」

「西川美和?」

「今、日本で結構注目されてる若手映画監督なのよ。私より年下。」

「揺、知ってるの?」

「前の作品二つ観たから。これはまだだけど。

ココで見られるなんてラッキーだわ。

公開してたとき日本にいなかったから」

揺はわくわくして画面を見つめている。

「ふ~ん」

画面に映し出されたのは「ゆれる」

オダギリ・ジョーと香川照之が微妙な兄弟関係を繊細に演じていた。

どこで入手したのか韓国語の字幕もついていて

皆ストーリーに見入っていた。

終わるまであっという間の時間だった。



「いいね。なかなか。」とジウン監督。

「ええ。いい感じに繊細で。脚本がよく出来てますね。」とビョンホン。

「絵も綺麗だし。オダギリ・ジョーも香川照之も上手かったですね。」と揺。

その後もそこに居た者で映画に関してのディスカッションが交わされた。

映画が仕事の者、趣味で映画好きの人それぞれの意見が飛び交っていた。

揺はあまりに熱くなり早くなる議論を半分くらい聞き取れなかったが

それでも皆の想いを充分に感じていた。

「揺・・・話わかる?」

あまりのヒートアップぶりに

揺の理解力を超えている会話だと気がついたビョンホンが声をかけた。

「うん。大丈夫。話の流れは大体わかるから。

しかし、一本の映画でこんなに語り合えるって

何だかとってもすごいね。

自分の映画がこんなに熱く語ってもらえたら幸せだろうな・・。

ねえ、ビョンホンssiそう思わない?」

揺はキラキラした目でビョンホンを見た。

「ああ。そうだね。僕たちの仕事でここまで喜んでもらえたら言うことないね。」

ビョンホンはそう答えると揺の腰に手を回ししっかりと抱きしめた。



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